研究概要 |
界面活性剤の中でも特に著しい経皮吸収促進作用を示すことが知られている陽イオン界面活性剤の長鎖アルキルトリメチルアンモニウム化合物の作用機構について、モルモット背部摘出皮膚を対象として検討した。安息香酸の皮膚透過に対して2mMの濃度ではいずれも顕著な促進作用を示し、その作用は陰イオン界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)よりも大であった。セチルトリメチルアンモニウムについて作用の濃度依存性を観察したところ、0.5〜5mMの濃度で著しい促進作用が認められたのに対して、高濃度(50mM)では逆に透過係数の低下が見られた。最も顕著な促進作用が観察された2mMの濃度で、安息香酸の4-n-アルキル置換体の皮膚透過性に及ぼす影響を観察したところ、透過係数のアルキル鎖長への依存性が大きく減少し、置換基のメチレン基の皮膚移行の自由エネルギー変化の絶対値が大きく減少していることをわかった。このことは、平成10年度に報告した角質層除去や脱脂、吸収促進剤N-dodecyl-2-pyrrolidone添加の場合と同様であり、皮膚の親水性への変化が吸収促進作用の一因となっていることが推定された。 長鎖アルキルアンモニウムスピンラベル剤である4-(N,N-dimethyl-N-pentadecyl)ammonium-2,2,6,6-tetra-methylpiperidine-1-oxyl iodide(CAT-15)を用いて、摘出皮膚及びトリプシン処理によって得た角質層についてESRスペクトルの観察を行った。その結果、角質層、摘出皮膚全体のいずれにおいても、運動性の極めて乏しい、固体状態に近いスペクトルが観察された。この結果は平成10年度に明らかにした脂肪酸スピンラベルで観察された結果と大きく異なった。長鎖アルキルアンモニウム化合物は、その正荷電とアルキル鎖とにより皮膚のタンパク質部分と高い親和性を有すること、これが顕著な吸収促進作用の一因である可能性が示唆された。
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