平成11年度に引き続き、アルキルスピンラベルを用いて、皮膚におけるアルキル化合物の局在について、モルモット背部摘出皮膚、皮膚角質層、脱脂皮膚、角質層脂質リポソームを対象として検討を行った。その結果、長鎖脂肪酸スピンラベルは角質層脂質ラメラ中に、長鎖脂肪酸エステルスピンラベルは角質層中のかなり流動性の高い領域に、長鎖アルキルアンモニウムスピンラベルは角質層のたん白質中に、短鎖アルキルアンモニウムスピンラベルは皮膚のバルク水中に存在することが示唆された。この結果は、アルキル化合物は、その電荷とアルキル鎖長に依存して皮膚での局在が異なることを示しており、この局在性の違いがアルキル化合物による経皮吸収促進作用の違いを生じている一つの原因となっていると考えられる。平成12年度は、二分子膜ベジクルを形成することが知られている二本鎖カチオン性界面活性剤についても、安息香酸をモデル薬物として経皮吸収促進作用について検討した。アルキル鎖の炭素数が10〜18の5種のジメチルジアルキルアンモニウムについて検討した結果、炭素数10〜14のものについては顕著な吸収促進作用が観察されたのに対して、炭素数16、18と長鎖のものでは促進作用が弱いことがわかった。脂肪酸スピンラベルを用いたESRスペクトルの観察結果は、炭素数10のものを除きベジクルの形成を示した。赤血球に対するジメチルジアルキルアンモニウムの溶血作用を観察したところ、溶血作用の強いものほど吸収促進作用が顕著であることがわかった。これらの観察結果は、二本鎖カチオン性界面活性剤の経皮吸収促進作用は、ベジクル全体としてではなく、界面活性剤モノマーの皮膚移行に依存して一本鎖のカチオン性界面活性剤とほぼ同様な機構でもたらされている可能性が示唆された。
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