粒子径単分散モレキュラーインプリントポリマーの調製は、テンプレート分子として(S)-ナプロキセン、機能性モノマーとして4-ビニルピリジン、架橋剤としてエチレンジメタクリレート、希釈剤としてトルエンを用い、多段階膨潤重合法により行った。重合は、アゾビスジメチルバレロニトリルを開始剤として用い、50℃で行った。表面親水化は、重合開始4時間後に過硫酸カリウム、グリセリンモノメタクリレート(GMMA)およびグリセリンジメタクリレート(GDMA)を70℃で添加して行った。また、比較のために表面親水化を行わないポリマーも同様に調製した。その結果、架橋剤であるエチレンジメタクリレートと希釈剤であるトルエンの量比を5:5(充填剤1)から7;3(充填剤2)に変化させることにより細孔径の異なる充填剤の合成を行った。表面親水化を行わない充填剤1および2からのBSAの回収率は10%および40%であった。次に、BSAの回収率の増加を目的として表面の選択的親水化を行った。表面親水化は、添加するGMMAおよびGDMAの割合を変化させて行った。GMMA:GDMA=5=5において、BSAの回収率はほぼ100%であった。表面親水化を行った充填剤は、表面親水化を行わない充填剤と比較して、種々の化合物の保持時間が短くなる傾向を示したが、(S)-ナプロキセンは選択的に保持された。これらのことから、表面修飾によって粒子表面が選択的に親水化されていることが明らかとなった。さらに、(S)-ナプロキセンを添加した血清の直接注入分析を行った結果、血清由来のピークと(S)-ナプロキセンは良好に分離されており、血清試料の直接注入による(S)-ナプロキセンの分析の可能性が示唆された。以上の結果から、得られた充填剤は血清中の(S)-ナプロキセンの直接注入分析に適用可能であることが明らかとなった。
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