研究概要 |
λfooファージの発現ベクターを用い、ファージディスプレイの系でパニングを数回繰り返すことにより、マンノース、N-アセチルガラルトサミン、N-アセチルグルトサミン、フコースの4種類のそれぞれの糖に結合するファージクローンを回収した。実際回収されたクローンを単離し、さらにそのファージからDNAを回収し塩基配列を決定することにより、導入した変異並びにそこから類推される改変レクチン糖結合ループのアミノ酸配列を決定した。マンノース結合活性を持ったクローン10個を拾ったところ、変異を導入した9アミノ酸から成るペプチドの配列は、3つのクローンでDSPNTSWE、2つのクローンはDSATNAEWG、他にDTIENGSWW,DGIPNSLWF,DGLNNDDWS,DDLENSDWGというアミノ酸配列であることが明らかになった。これらマンノース結合活性を持つレクチンの糖結合ループのアミノ酸配列に関して、何らかの規則性があるのか否かを検討した。1残基目のD(Asp)、5残基目のN(Asn)、8残基目のW(Trp)は、カルシウムイオンとのキレーションに必須であり、カルシウムを結合することでループの構造を維持している。それ故、今回の変異の導入はこれらアミノ酸残基を保存するようにした。この3つのアミノ酸残基以外に着目しその規則性があるか否かを検討してみると、際だって保存されている配列(アミノ酸残基)は見当たらなかった。ここで用いたレクチンライブラリーは3.7×10^6の独立したクローンから成っているが、計算上は6×10^7(20^6)の可能性があり、用いたライブラリーは全体のわずか8%に過ぎずこの実験系において、今後の課題であろう。
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