研究概要 |
核内ステロイドレセプターの一つであるPPAR(パーオキシソーム増殖剤応答レセプター)α、γ、δは脂質代謝、脂肪細胞分化誘導、血管内皮での泡沫細胞形成等の多彩かつ特異的な生理作用を司っている。PPARはリガンド誘導性転写制御因子として働き、リガンドのシグナルに応じて標的遺伝子の発現を転写レベルで調節する。この際、PPARはRXR(レチノイドXレセプター)とヘテロダイマーを形成し、PPAR、RXR各々のリガンド依存的に転写共役因子群を獲得し、基本転写装置と共に転写を開始する。このようなPPAR機能発現には、リガンドの結合が必須であるが、内因性PPARリガンドは複数存在することが知られている。そのためPPARによる多様な生理作用は、多様なリガンド各々固有の作用が担うと予想されている。その分子メカニズムとして、様々なPPARリガンドが転写共役因子群を選択的に使い分けることで、リガンド固有の作用をもたらしている可能性が考えられる。また、一般に既知核内レセプターリガンドの生合成はリガンド産生酵素により厳密に制御されているため、PPARリガンド産生酵素には未同定酵素の存在が考えられる。 そこで、本研究ではPPARリガンド群の特異的生理作用をもたらす分子メカニズムの解明を目指し、I.リガンドによる選択的なPPARgと転写共役因子の相互作用、II.PPAR(a,g)リガンドの同定を目指した新規リガンド産生酵素の検索、の2点を検討した。
|