1.新たに発見した好中球走化性因子の組換え体の作製: 昨年度の研究によって、ラット・カラゲニン空気嚢炎症の肉芽組織から新規好中球走化性因子(XIV型コラーゲン由来のN末端側16kDaペプチド)を精製した。その生物活性を明らかにする目的でヒトXIV型コラーゲンのN末端側14kDaペプチドの組換え体を作製した。作製した組換え体の好中球走化性活性および細胞内Ca^<2+>濃度の一過性上昇作用を検討した結果、いずれも活性を示さなかった。この結果は、作製した組換え体は、N末端アミノ酸がブロックされていないこと、C末端側が短いこと、およびヒトのXIV型コラーゲン配列であることによると推測される。今後、ラットのXIV型コラーゲン配列に基づく組換え体を作製して検討する必要がある。 2.好中球浸潤におけるケモカインの役割の解明: 本年度は、LPS誘発空気嚢炎症モデル(ラット)および細菌毒素誘発空気嚢炎症モデルを用いて、炎症局所の各ケモカイン濃度を特異的なELISA系で測定し、また各ケモカインに特異的抗体による好中球浸潤抑制の有無について検討した。その結果、特異的抗体でケモカイン活性を阻害することによって好中球浸潤が有意に強く抑制され、ケモカインが好中球浸潤の主なケミカルメディエーターであることが明らかになった。また、好中球浸潤に関与するケモカインは主にCINC-2とCINC-3であり、一方、MIP-1αは多量に存在するが、好中球走化性因子としての役割は低いことが明らかになった。
|