研究概要 |
1.ラットの肉芽組織に存在する新規好中球走化性因子の精製: ラット・カラゲニン空気嚢炎症の肉芽組織に存在する新規好中球走化性因子を精製した。精製した因子は、ヘパリン結合部位を持つ塩基性タンパクであり、SDS-PAGEの還元条件下で分子量が16kDaであった。新しい因子のN末端アミノ酸が修飾されていたので、Lysylendopeptidaseによる選択的限定分解によって得られる部分ペプチドを分離・精製し、部分ペプチドのアミノ酸配列を調べた。その結果、ラットXIV型コラーゲンのフィブロネクチンIII型ドメインとヘパリン結合領域を含むN末端側16kDaペプチドであることが明らかになった。この16kDaペプチドは、用量依存的にラット好中球の遊走を誘導し、Ca^<2+>の好中球細胞内への一過性の取込みを促進した。これらの結果は、新規走化性因子がラット炎症における好中球浸潤に関与していることを示唆する。 2.ラット炎症モデルの好中球浸潤におけるケモカインの役割: 各ケモカインに対する特異的なELISA系を用いて、2つのラット炎症モデル(FITC-卵白アルブミン誘発アレルギー炎症モデルおよびLPS-誘発炎症モデル)の嚢内液中のケモカイン(CINC-1,-2,-3およびratMIP-1α)濃度を測定した。また、抗ケモカイン抗体の好中球遊走に対する影響をin vivoおよびin vitroで検討した。その結果、抗CINCs抗体は、全てのCINCsを阻害し、in vivoにおける好中球浸潤ならびにin vitroにおける8時間滲出液の走化性活性を抑制した。一方、抗MIP-1α抗体による好中球遊走の抑制はごく僅かであった。これらの結果から、アレルギー炎症ではCINC-1/-2が、LPS炎症ではCINC-2/-3が炎症局所への好中球浸潤において重要な役割を果たしていると推測される。
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