研究概要 |
酸化脂質がアテローム性動脈硬化の発症に関与することは良く知られた事実である。我々は、高度不飽和脂肪酸を含むホスファチジルコリン(PC)を過酸化すると、血小板活性化因子(PAF)に類似した新規化合物が生成することを報告している。PAF様脂質は、短鎖モノカルボン酸(MC),ジカルボン酸(DC),ω-ヒドロキシカルボン酸(HC)或いはジカルボン酸セミアルデヒド(DCsa)を持つ4種に分類できる。今回、大豆或いはウサギ網状赤血球の15-リポキシゲナーゼにより1-palmitoyl-2-linoleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine(16:0/18:2-PC)の過酸化を誘導し、生じるPAF様脂質をFAB-MSとGC-MSで分析した。 主なPAF様脂質はMC_<8:0>とDCsa_<9:0>であり、8:0,10:0,11:1,12:1,12:2及び13:2のDCsaも少量存在することが推定されたので、PAF様脂質をホスホリパーゼCで加水分解後、tert-butyldimethylsilyl誘導体に転換しGC-MS分析を行った。その結果、多種の短鎖飽和及び不飽和アルデヒド含有PAF様脂質を検出することができた。次に、MCを同定しようと試みたが、8:0〜10:0の飽和体のみしか検出されなかった。しかし、接触還元処理を行うと、8:0〜13:0の多種の飽和MCが検出された。10:0〜13:0-MCは不飽和のMC由来と推定される。DCやHCが多く検出されたFe^<2+>/アスコルビン酸/EDTAの系とは異なり、リポキシゲナーゼの系で生成する主要なPAF様脂質は、複数のPCハイドロパーオキサイド異性体より派生するDCsa及びMCであることが明らかとなった。
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