酸化脂質やリゾリン脂質がアテローム性動脈硬化の発症に関与する可能性を検討し、以下の知見を得た。 1.大豆或いはウサギ網状赤血球の15-リポキシゲナーゼを用いてリノール酸含有ホスファチジルコリン(PC)の過酸化を誘導し、生じる血小板活性化因子(PAF)様脂質をFAB-MSとGC-MSで分析した。主要なPAF様脂質は、複数のPCハイドロパーオキサイド異性体より派生する短鎖ジカルボン酸セミアルデヒド或いは及びモノカルボン酸を含有するPCであった。 2.ジカルボン酸セミアルデヒド含有は、インターフェロンとリポポリサッカライドによる血管平滑筋細胞におけるNO産生を有意に抑制した。 3.ラット、ヒト及ぴウサギの血漿や血清には、金属イオン要求性のリゾホスホリパーゼDが存在し、37℃で保温するとリゾホスファチジルコリン(LPC)を加水分解し生理活性を有するリゾホスファチジン酸(LPA)を産生した。 4.動物血漿や血清のリゾホスホリパーゼDは、飽和脂肪酸を持つLPCよりも不飽和脂肪酸を持つLPCを好んで作用した。 5.高コレステロール食で飼育したウサギでは、血清リゾホスホリパーゼD活性は、コレステロール負荷1週で負荷前より有意に高く、2-3週で更に活性が増加するが、4週以降は元のレベルに低下した。また、血清のLPCとLPA濃度はコレステロール負荷の進行と共に増加した。
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