研究概要 |
細胞膜リン脂質と極めて類似した化学構造を有するPAFが血小板レセプターに結合した後の細胞内動態と、PAF刺激で活性化した血小板細胞膜上の細胞接着分子Pセレクチンの発現機構について解析した。PAFで凝集惹起した血小板のレセプター結合PAFが代謝されると血小板は脱凝集され、PAFレセプター拮抗薬(Y-24180,WEB-2086,SM-12502,CV-3988)を添加するとレセプターに結合したPAFが解離されると共に、脱凝集の亢進が観察された。[^3H]Acetyl-PAFをウサギ血小板とインキュベートし、血小板に結合およびメディウム中の[^3H]acetyl-PAF量、遊離^3H酢酸量、血小板形態変化を経時的に解析したところ、[^3H]Acetyl-PAFを血小板とインキュベートした際に遊離された標識酢酸はメディウム中に回収され、細胞質には回収されなかった。またインタクト血小板、血小板膜画分、細胞質PAFアセチルヒドロラーゼ(PAF-AH)活性を[^3H]acetyl-PAFを用いて我々が開発したTCA沈殿法で測定し、細胞質PAF-AHの活性が残存する条件下でプロテイナーゼKあるいはジエチルピロカーボネートで処理するとインタクト血小板のPAF脱アセチル化活性が消失したことから、血小板膜表面にエクト型PAF-AHが存在することが示された。さらにPAFレセプター拮抗薬により解離されたレセプター結合PAFはエクト型PAF-AHにより速やかに脱アセチル化されることが示された。トロンビン刺激と異なりPAF刺激の凝集反応は可逆的な反応であり、接着分子PセレクチンはPAFがレセプターに結合している間だけ発現することから、新規な情報伝達機構の存在が推察された。
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