研究概要 |
早期不活性化A型Kチャネルは興奮性細胞において活動電位の発生タイミング調節、発生頻度調節、早期再分極相形成などの重要な役割を演じている。ラット各種平滑筋細胞に発現しているA型Kチャネルは主にKv4.3であり、特に既知の脳由来Kv4.3(Kv4.3M)のC末端領域に19アミノ酸が挿入された新規遺伝子多形(Kv4.3L)が主要であることが強く示唆された。さらに心筋のA型KチャネルはKv4.2と4.3の混合であるが、そのKv4.3もKv4.3Lが主要であることが示唆された。また、脳においてはKv4.3M mRNAが圧倒的に高発現であるが、海馬にはKv4.3Lが高発現していることがあきらかとなった。さらに電気生理学的にクローンKチャネル電流とA型K電流を比較するため、HEK293細胞にKv4.2,4.3Mまたは4.3Lを形質導入し、その電流をホールセルクランプ法により測定した。ラット輸精管からの平滑筋細胞からA型K電流を記録し、クローンKv4.2,4.3M,4.3L電流と定量的に比較検討した。その結果、これらのクローンKチャネル電流は輸精管平滑筋A型電流と類似したキネティクスを示したが、活性化・不活性化電位や不活性化からの回復の時間依存性などの細部では有意に異なっていた。特に不活性化からの回復はA型K電流において明らかに早かった。4-アミノピリジンに対する感受性もクローンKチャネル電流とA型電流では異なっていたが、アラキドン酸に対する感受性には差が見られなかった。上記のキネティクスの違いは細胞骨格とKチャネルの関係が平滑筋細胞とKチャネルクローンを強発現させたHEK細胞で異なることに由来するものではないという示唆を与える結果が得られた。βサブユニットあるいは細胞内制御因子の存在を考えるべきであると思われる。なお、Kv4.3M2:Kv4.3L電流の間には、少なくともホールセルクランプ法で観察する限り、電気生理学的に明かな差はなかった。
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