昨年度において、ミトコンドリア型PHGPxが抗アポトーシス因子であることが明らかとなった。本年では、アポトーシスが活発に行われる精子形成過程におけるPHGPxの発現について、男性不妊患者精子を用いて検討した。その結果、73名の不妊患者のなかで、7名の患者精子において、発現が著しく低下していることが明らかとなった。いずれのPHGPx発現低下患者は乏精子症、かつ精子無力症の最も重度な不妊症群に分類された。PHGPx発現低下の精子のミトコンドリアは膨潤し、膜電位は低下し、明らかに機能、形態の異常が見られた。このことから、PHGPxの発現低下は精子形成のアポトーシスに重大な支障をきたし、重度の不妊症を引き起こすことが明らかとなった。 マウスPHGPxのゲノムをクローニングし、そのプロモーター領域のルシフェラーゼをレポータージーンとして解析を行った。PHGPxにはミトコンドリア型PHGPxのコアプロモーターは転写開始点より、SP1サイトを含む約100塩基上流に存在していた。PHGPxのプロモーター領域を5'上流から欠失したdeletion mutanntを作成して、プロモーター活性を測定したところ、コアプロモーターの5'上流にはサプレッサー、エンハンサー領域がそれぞれ存在することが明らかとなった。
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