ミトコンドリア型PHGPxと非ミトコンドリア型PHGPxのmRNAの発現をRT-PCR法を用いて検討した。非ミトコンドリア型PHGPxは腎臓、L929細胞などの体細胞においては恒常的に高く発現していたが、ミトコンドリア型PHGPxのmRNAの発現は精巣を除いて非常に低いものであった。マウスの週齢における精巣と腎臓の発現を検討した結果、ミトコンドリア型PHGPxは精巣では3週齢から誘導されるのに対し、腎臓では誘導されず、ミトコンドリア型PHGPxの誘導には臓器特異性が見られた。 非ミトコンドリア型PHGPxのコアプロモーター部位は転写開始点より上流の-176から-56、ミトコンドリア型PHGPxは-233から-158であった。ミトコンドリア型PHGPxのプロモーター領域の5'上流配列にはサプレッサー領域およびエンハンサー領域が存在することが示され、体細胞ではミトコンドリア型PHGPxのエンハンサー領域が5'側のサプレッサー領域により抑制されて、ミトコンドリア型PHGPxのプロモーター活性が低く抑えられていると考えられた。 健常人、および、不妊症患者精子中のPHGPxを含む抗酸化酵素の発現と、精子運動能、精子機能との関連について検討した。58名の不妊患者、および妊孕性の認められた男性(健常人)21名の精液サンプルについて検討を行った結果、6名の患者においてPHGPxまたは、CuZn-SODの発現が著しく低下していることを見いだした。PHGPxの発現に著しい低下が見られた患者においては総精子数の減少、運動能の低下が認められた。PHGPxの発現が低下していた患者の精子ではRh123の蛍光が見られず、ミトコンドリア機能が低下していることが明らかとなった。
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