研究概要 |
1.オリゴマイシン結合に関与する部位の特定 Na^+,K^+-ATPase α鎖のN末端側第一、第二貫通ペプチドを含む領域に、オリゴマイシンの結合領域があることを、すでに示した。詳細にその結合境域を特定するため、[^3H]オリゴマイシンを作製し、光反応によってα鎖への結合を試みる予定だった。しかしこの試薬が廃棄されるトラブルがおこったため、オリゴマイシンの発する蛍光を手がかりに実験を試みた。しかし光反応によるオリゴマイシン結合を確認できなかった。そもそも光反応では本来の結合部位以外にも結合が起こることが珍しくないことから、この方法による結合部位の同定は断念した。最近パソコンによってリガンドの結合部位を探るソフトウエアが売りだされているので、今後これを用いて結合部位を推定したいと考えている。 2.K^+輸送に関与する領域の特定 K^+輸送に関する部位の情報を得るため、Na^+,K^+-ATPaseの部分反応であるK^+依存性ホスファターセ活性を、Na^+およびオリゴマイシン存在下で解析した。基質としてパラニトロフェニルリン酸(pNPP)を用いた。 (1)Na^+:K^+比が10:1以上になると、オリゴマイシンはpNPPase活性を促進した。この効果はK^+濃度が低いほど顕著だった。 (2)私の開発したイオン結合法で調べたところ、オリゴマイシンは(1)の条件でK^+親和性を上げることがわかった。 これまでNa^+のみの輸送阻害及び親和性増大を示すと考えられていたオリゴマイシンが、なぜK^+親和性を上げたのか?この現象はNa^+,K^+-ATPaseのNa^+,K^+選択性や輸送機構とどのように関わっているのか、さらなる検討を継続中である。
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