研究概要 |
本年度は以下の研究を行った. 1)昨年度行ったin situ温阻血障害肝モデルの手術手技妥当性を検討するため,虚血および再灌流中の血中LDH量を指標にした.血中LDH量は虚血中および再灌流3時間以降に濃度上昇が観察され,これまで報告されている温阻血傷害肝モデルでの血中LDH濃度の推移と一致した.本実験手技の妥当性が確認された. 2)温阻血再灌流時に誘導されるiNOS mRNAの発現強度およびNO産生量を実質・非実質細胞群間で比較したところ,虚血30分後の再灌流を3時間施したラット肝から調製した非実質細胞群においてiNOS mRNA発現およびNO産生量の両方とも最大値を示すことが明らかになった. 3)設計した5種類のホスホロチオエート型アンチセンスDNA(AS1〜AS5)を用い2)の条件で非実質細胞群から産生されるNOに対する抑制効果を検討した.iNOS mRNAの5'非翻訳領域に対するAS1がiNOSmRNA発現ならびにNO産生を抑制した.しかしβ-actin mRNA発現も減弱いるので,本配列が毒性を有することが考えられる.また,翻訳領域を標的とするAS3はNO産生を,3'非翻訳領域に対するAS5はiNOS mRNA発現をそれぞれ抑制したが,共にアンチセンスDNA未処理のControlと有意な差はなかった.加えて,AS3ならびにAS5はβ-actin発現を減弱させる傾向が認められ,障害を増悪する可能性が示唆された.
|