研究概要 |
白血球の表面抗原に対する単クローン抗体4C1がCD14を抗原とすることが明確になったことから、本年度はマクロファージ(Mφ)の活性化におけるCD14の機能をさらに明確にすることを目的として,サイトカインによるMφの活性化における4C1の抑制作用について検討した.IFN-γ及びIL-6によるMφからのNO産生,mRNA及びタンパク質レベルにおけるiNOSの発現誘導に対して4C1前処理が抑制的に作用することが示された.この抑制作用は,IL-6受容体へのIL-6の結合を抑制することにより起こるものではなく,また,Fcγ受容体の関与もないことが示された.IFN-γ及びIL-6の受容体への結合に伴うSTATのリン酸化について検討したところ,4C1前処理によるSTATのチロシンリン酸化の抑制はみられなかった.しかし,IL-6の作用発現に関わる他のシグナル伝達経路であるMAPKのリン酸化について検討したところ,MAPKファミリーのうち,p38のリン酸化が抑制を受け,Erk1/2のリン酸化の増大が観察された.近年,細胞膜上にはCD14などのGPI-アンカータンパク質及び膜貫通型の増殖因子受容体,さらに,その近傍の細胞内領域にシグナル伝達分子が集積したマイクロドメイン(ラフト)があることが明らかとなってきている.そこでメチル-β-シクロデキストリン(MCD)処理で細胞からラフト形成に必要不可欠なコレステロールを除去することにより,ラフトの関与を検討したところ、MCD処理により細胞表面のCD14の発現量は、未処理の細胞とほとんど変わらなかったにもかかわらず、IFN-γ及びIL-6によるMφからのNO産生における4C1の抑制作用が失われた。このことからラフト形成が4C1の抑制作用に重要であることが示唆された.
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