研究概要 |
白血球の貪食制御におけるアクチン結合蛋白質p57の役割について調べるため、まず細胞内のp57の挙動を検索する試薬としての抗p57抗体(p57のN末端側とC末端側を認識する2種類の抗体)を作製した。これらの抗体を用いて調べた結果、貪食初期にはp57はアクチンともにファゴソームに集まるが、成熟したファゴソームからはアクチンとともに遊離することが判明した。一方、NADPHオキシダーゼのサブユニットであるp47phoxやp67phoxは、貪食初期にはp57同様ファゴソームに集まるが、ファゴソームが成熟しても留まっていた。これらの事実は、p57やアクチンがファゴソームの形成に必要であるが、成熟したファゴソームでの機能には関与していないことを示唆する。また、p47phoxやp67phoxが、成熟したファゴソームで活性酸素の産生を通して殺菌効果を示すこととも一致する。このことは、貪食は正常であるが殺菌作用の欠如するX連鎖性慢性肉芽腫症(CGD)患者の貪食細胞を用いた実験からも示唆された。すなわち、CGD貪食細胞では、貪食初期に正常細胞と同様にp57,アクチン,p47phox,p67phoxともファゴソームに集まるが、成熟ファゴソームからはp57やアクチンのみでなく、p47phoxやp67phoxも遊離してしまうことが判明した。P57のファゴソームへの集合と遊離の機作についても検討し、プロテインキナーゼC(PKC)によるリン酸化が、関係することも明らかとなった。すなわち、PKCのインヒビターを貪食時に加えると、成熟ファゴソームからのp57の減少が抑制された。P57のファゴソームへの集合と遊離の機作へのPKCによるリン酸化の関与についてはさらに詳細に検討中である。
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