研究の目的1について。PCR in vitro mutagenesis法を用いてHM-1トキシンに含まれるN末端から61番目、82番目、85番目、及び86番目のアルギニン残基を、アラニンに換えた新HM-1トキシンの遺伝子を作成し、YEp51プラスミドに組み込んだ。このプラスミドをHM-1トキシン耐性の酵母Saccharomyces cerevisiaeに導入し、新HM-1トキシンを発現させた。培地中に生産される新HM-1トキシンの量は各トキシンに特徴的であった。得られた新HM-1トキシンについてPichia anomala株を検定菌に用い、プレートカップ法により新HM-1トキシンのキラー活性を測定したところ、61番目及び85番目のアルギニン残基をアラニンに換えたHM-1トキシンは活性を保持していたが、82番目及び86番目のアルギニン残基をアラニンに換えたHM-1トキシンは活性を示さなかった。この結果は、各トキシンのキラー活性の最小有効濃度の測定によっても支持され、HM-1トキシンの82番目及び86番目のアルギニン残基のキラー活性への関与が示された。 研究の目的2について。精製HM-1トキシンをマウスに投与後定法に従って、HM-1トキシンのキラー活性を妨害しないモノクローナル抗体を得た。低分子量Gタンパク質Rho-1に対する抗体は、同タンパク質に特徴的な15残基のアミノ酸からなるペプチドを合成し、ウサギに投与後、定法に従って抗体を得た。 研究の目的3について。HM-1トキシンの10Lスケールからの精製を試みた。培養は10Lのジャーファーメンター法で行った。菌株は従来の様にHM-1トキシンを産生した。この培養液からほぼ従来法に準じ、イオン交換樹脂やHPLCのカラムのスケールを大きくして、純粋なHM-1トキシンを多く得ることが出来た。
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