研究概要 |
1 Williopsis saturnus var.saturnusの産生するHYIトキシンの作用の諸性質について調べた。HYIトキシンが感受性酵母Saccharomyces bayanusに作用すると、感受性酵母はその出芽部位で菌体内成分を噴き出して死んだ。このキラー活性の強さは感受性酵母の生育の速さと一致した。HYIトキシンの感受性酵母への吸着について調べたところ,HYIトキシンは遠心洗浄で酵母から離れた。アイソトープを用いてグルカン合成酵素に対する影響を調べたところ、HYIトキシンはIC_<50>値3.2×10^<-8>Mで同酵素を阻害した。グルカン合成酵素に対するモノクローナル抗体を用いて同酵素の分布を調べたところ、同酵素は酵母の出芽部位に分布していた。これらの結果から、HYIトキシンの作用機序は感受性酵母のグルカン合成酵素阻害と考えられた。 2 部位特異的突然変異誘発法を用いてHM-1トキシンのキラー活性に関与するアルギニン残基を決定した。HM-1トキシンに含まれるN末端から61番目、82番目、85番目、及び86番目のアルギニン残基を、アラニンに換えた新HM-1トキシンの遺伝子を作成し、YEp51プラスミドに組み込んだ。このプラスミドをHM-1トキシン耐性のS.cerevisiaeに導入し、新HM-1トキシンを発現させた。培地中に生産される新HM-1トキシンの量は各トキシンに特徴的であった。得られた新HM-1トキシンについてPichia anomalaに対するキラー活性を測定したところ、61番目及び85番目のアルギニン残基をアラニンに換えたHM-1トキシンはキラー活性を保持していたが、82番目及び86番目のアルギニン残基をアラニンに換えたHM-1トキシンはキラー活性を示さなかった。これらの結果から、HM-1トキシンの82番目及び86番目のアルギニン残基のキラー活性への関与が示された。
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