研究概要 |
糖尿病合併症である増殖型網膜症の発症機序を、網膜への栄養補給に役割を担っている脈絡膜の血管新生の立場から研究し、以下の成果を得た。 1. NIDDMモデルGKやストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病態Wisterラットの眼球から単離した脈絡膜を用いて、In vitro系で培養脈絡膜組織から発芽した新生血管の定量方法を確立した。そして、糖尿病態が、ウシ胎児血清(FBS)による培養脈絡膜組織の血管新生作用を増強することを見い出した。更に週齢を増した正常ラットの脈絡膜血管新生も促進したことから、本方法は、加齢の研究にも応用できる可能性を示した。 2. 糖尿病態による血管新生増強作用機序を検討する前に、STZ-糖尿病態における血管新生に対する漢方薬粉防已の成分テトランドリンおよび関連合成化合物の抑制効果を検討した。テトランドリンおよびKS-1-1、KS-1-4は、糖尿病態における脈絡膜血管新生を正常時より強力に抑制し、これらの抗血管新生作用は、STZ-糖尿病態マウスを用いたIn vivo系の肉芽血管新生およびFBSによる培養内皮細胞の管腔形成に対するこれらの抑制作用と平行した。特に、KS-1-4は正常には作用せず、糖尿病態の脈絡膜血管新生を選択的に抑制した。この糖尿病態における抗血管新生作用には、テトランドリンのberbaman環ではなく、oxy-bis[phenylenemethylene]と2,2'-methyl残基を有するbis[tetrahydroisoquinoline]骨格が、必須であることを明らかにした。以上から、テトランドリンとKS-1-4は、糖尿病性脈絡膜血管新生更には増殖型網膜症の治療薬のリード化合物と成り得る可能性を見い出した。これら化合物を実験的武器として駆使し 糖尿病態による血管新生増強機構を増殖因子やサイトカインの作用の関連から次年度に検討する予定である。
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