スフィンゴミエリナーゼ処理、またはC_<6->セラミド(N-hexanoylsphingosine)の添加でセラミドを増大させた細胞での、刺激下でのホスホリパーゼ(PL)活性への影響を検索し、以下の成果を得た。 1.ウサギ血小板にC_<6->セラミドを添加し、低濃度のトロンビンで刺激すると、IV型細胞質PLA_2(cPLA_2)活性化とアラキドン酸の遊離が促進された。この機構を検索した結果、セラミドはトロンビン刺激によるPLCとこれに続くprotein kinase Cの活性化の亢進を引き起こし、これがmitogen-activated protein kinase(MAPK)-cPLA_2の連鎖的な活性化を引き起こすことを明らかにした。 2.血小板をU46619で刺激してもアラキドン酸の遊離はほとんど生じないが、セラミドを増大させた血小板では、cPLA_2活性には影響なく、著明な遊離が生じた。そこでセラミドが膜脂質層の変化を介してcPLA_2の膜への作用を促進する可能性を検索した。その結果、血小板をCa^<2+>イオノフォアで刺激した時、および血小板破砕液にCa^<2+>を添加した時の、Ca^<2+>依存性の膜画分でのcPLA_2タンパク質量の増大が、セラミドを増大させた血小板またはその破砕液ではさらに促進されることが示された。 3.ラット好塩基球系白血病細胞(RBL-2H3)で、C_<6->セラミドは抗原刺激下のプロスタグランジンD_2産生を抑制する知見を得ている。この機構を検索した結果、セラミドはcPLA_2活性を制御しているp42/p44 MAPKの抗原刺激下の活性を抑制した。さらにこの抑制は、オカダ酸では回復しなかったがorthovanadateにより回復した。このことから、セラミドはprotein tyrosine phosphataseを活性化する可能性が示唆された。 以上の結果は、刺激により産生されるセラミドが、刺激下でのPLA_2活性を抑制する生理的因子として働く可能性を示している。
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