研究概要 |
亜鉛イオン依存性チロシンホスファターゼは、その触媒活性が完全に亜鉛イオン依存的である点が従来のチロシンホスファターゼと大きく異なるところである。この酵素には主として肝臓に含まれる分子量約10万の高分子量型と、脳に含まれる分子量約6万の2種類のタイプの存在が確認されている。このうち脳型の酵素は、生理的条件下でマグネシウムイオン依存的にイノシトールモノホスファターゼ(Mg^<2+>-IMP)活性を示すなど、特異な酵素であることが明らかになってきた。しかし、主として肝臓に含まれる高分子量型酵素の場合と同様、生理機能を初めてとして、不明な点が多く残されている。今回、脳型および肝臓型チロシンホスファターゼに関して新たに以下の知見を得た。 (1) 肝臓中の亜鉛イオン依存性チロシンホスファターゼについては高分子量型酵素が主であるが、低分子量型酵素も少量含まれることを認めた。両酵素を電気泳動的に単一に精製し、酵素化学的諸性質を脳型酵素のそれと比較した。高分子量ならびに低分子量酵素とも、酸性条件下においては金属要求性や基質特異性は類似しており、脳型酵素と同様の性質を示した。しかし、生理条件下においては、低分子量型酵素には脳型酵素と同様に、Mg^<2+>-IMP活性が認められたが、高分子量型酵素には全く認められなかった。なお、脳型酵素に対する特異抗体は肝臓中の低分子量酵素を認識するものの、高分子量型酵素を全く認識しなかった。以上の結果、低分子量の脳型酵素と高分子量の肝型酵素とは酸性条件下での亜鉛依存性チロシンホスファターゼとしての性質は共通性があるものの、生理的な条件下における性質においては両者の間に明らかな違いが認められた。(Biol.Pharm.Bull.,21,1218-1221(1998) (2) 牛脳からイノシトールモノホスファターゼを既報に従って単離精製し、本酵素が酸性条件下で亜鉛イオン依存的にチロシンホスファターゼ活性を示すことを確認した。(Gen.Pharmac.31,469-475(1998)
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