1.中国マムシ血清からPLA_2阻害タンパク質の大量精製と結晶化 昨年度に確立した精製方法を用いて、約10mlの中国マムシ血清からそれぞれ10mg、5mg、20mg、のPLIα、PLIβ、PLIγを精製することができた。現在、Hanging Drop法を用いてこれらのPLA_2阻害タンパク質の結晶化の条件を検討しているが、X線結晶解析に適した結晶を得るまでに至ってはいない。 2.大腸菌を用いたPLA_2阻害タンパク質の発現系の確立と部位特異的変異導入を用いた構造活性相関 昨年度に天然のPLIαと同程度のPLA_2阻害活性を持つ組換えタンパク質を発現させる系を確立しているので、この系を用いて部位特異的にアミノ酸置換させた組換え体を作成し、それらのPLA_2阻害活性を測定した。その結果、Asn-26をLysに置換した変異体N26KとTyr-144をSerに置換した変異体Y144Sにおいて中国マムシ酸性PLA_2に対する阻害活性の顕著な低下が見られた。一方、我々はシマヘビの血清に中国マムシPLIαのアミノ酸配列と約70%の相同性を持つにもかかわらず、PLA_2阻害活性を全く示さないPLIα様タンパク質を見いだしたので、これを精製し、そのcDNAをクローニングした。そこで中国マムシPLIαとシマヘビPLIα様タンパク質との組換えキメラタンパク質を発現させその阻害活性を調べることにより、PLA_2活性の阻害にかかわる領域を特定しつつある。現在のところPLIαに存在するCRD様配列は必ずしもPLA_2との相互作用に直接かかわるのではなく、PLIαの3量体構造の保持などの構造的な基盤としての役割を果たしており、PLA_2との相互作用にはCRD以外のN末端およびC末端の領域が必要であると考えている。
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