摂食調節には種々のホルモンや神経伝達物質が関与することが知られ、なかでもserotonin(5-HT)は摂食抑制作用を引き起こすことから、5-HT神経系を活性化する薬物は過食症治療薬として用いられている。5-HT受容体は細分化が進行しているが、5-HT_7受容体と摂食との関連は不明であった。そこで、5-HT_7受容体作動薬である5-carboxamidotryptamineの摂食に対する影響について検討を行った。その結果、5-carboxamidotryptamineは絶食および2-デオキシ-D-グルコース誘発過食に対し抑制を示した。従って、5-HT_7受容体が摂食調節に役割を担うことが示唆された。最近、一酸化窒素(NO)も摂食に関与することが報告されている。研究代表者はNO合成酵素阻害薬が2-デオキシ-D-グルコース誘発過食を明らかに抑制することを明らかにした。以上の知見から、NOが摂食に役割を担うことをさらに明らかにした。5-HTとNOとの摂食調節における関連は不明であることから、5-HT作動性神経を抑制し、摂食亢進を引き起こすことが知られている8-OH-DPAT誘発摂食亢進に対するNO合成酵素阻害薬の影響について検討した。8-OH-DPATによる摂食亢進に対し、神経型NO合成酵素阻害薬は明らかな抑制を示した。以上の知見から、NOが5-HT作動性神経の抑制により惹起される摂食亢進に関与することを明らかにした。また、摂食調節に重要な役割を担う視床下部の5-HT合成をNO合成酵素阻害薬は増加させなかったことから、NO合成酵素阻害薬の摂食抑制作用は5-HT合成に対する作用以外の機序により引き起こされるものと考えられた。
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