研究概要 |
急速な高齢化社会を迎えて、骨粗鬆症や変形性関節症などの加齢性疾患の増加が問題となってきている。これらの疾患の基礎となるものは骨の形成及び吸収の異常によって引き起こされるものであり、骨形成及び骨吸収のバランスの機構を生体レベル及び細胞レベルでの解明が重要である。そこで、骨代謝調節因子の遺伝子発現の挙動を生体レベルで解明することを目的とした。 1 正常動物における骨代謝調節因子の挙動 ラットの骨は雌雄ともに成長期にあたる生後1〜3カ月で最も活発に形成され、骨密度は急速に増加することを確認するとともに骨密度を効率的に上昇させる方法について検討した。また、この時期の血漿中活性型ビタミンD濃度は高く、これに伴い小腸のCa吸収能は充進し、血漿中のビタミンD依存性骨基質蛋白質であるオステオカルシンなどの濃度が上昇する。そこで,骨におけるオステオカルシン及びその他の骨代謝調節因子の発現量について、Northarn Blot法あるいはcompetitive RT-PCR法の条件を検討した。2 ビタミンD受容体(VDR)欠損マウスにおける骨代謝調節因子の挙動 ビタミンD作用が完全に失われたVDR遺伝子欠損マウス(VDRKO)の骨は,離乳後に脛骨・大腿骨が徐々に短くなり,やがて骨端が肥大して,くる病症状を示すことが知られている。しかし,VDRKOの骨については,骨代謝調節因子の発現量など骨形成過程に関して未だ不明な点が多い。そこで,VDRKOの骨におけるオステオカルシンmRNAの発現量を調べることにより,骨成長におけるVDRの役割について検討した。その結果,7週齢のVDRKOの大腿骨におけるオステオカルシンmRNAの発現量は,Wildの約40%に低下しており,VDRKOの骨形成因子は遺伝子レベルで低下していることが示された。
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