研究概要 |
ビタミンD作用が完全に失われたVDR遺伝子欠損マウス(VDRKO)の骨については,骨代謝調節因子の発現量など骨形成過程に関して未だ不明な点が多い。そこで、骨代謝調節因子の遺伝子発現の挙動を生体レベルおよび組織レベルで解明することを目的とした。 1.VDRKOの大腿骨および椎体骨中の骨代謝調節因子mRNA発現量の成長に伴う変化:VDRKOの成長過程における骨中のオステオカルシン(OC)およびオステオポンチン(OP)mRNAの発現量をcompetitive RT-PCR法で定量することにより,骨成長におけるVDRの役割について検討した。その結果,(1)VDRKOの大腿骨におけるOC mRNA発現量は,Wildに比べ3週齢で有意差はないものの低い傾向が認められ,7週齢では有意に低かった。(2)VDRKOの椎体骨におけるOC mRNA発現量は,Wildに比べ3週齢で有意差は認められなかったが,7週齢では高い値を示した。しかし,WildおよびVDRKOともに大腿骨に比べ発現量が低いことから,椎体骨におけるOCの骨形成への関与は大きいものではないことを示した。(3)VDRKOの大腿骨および椎体骨のOP mRNA発現量は,3週齢,7週齢ともにWildと差異が認められなかった。 2.VDRKOの脛骨中の骨代謝調節因子mRNA発現量の組織化学的観察:マウスの脛骨中のOCおよびOPの発現部位をmRNAレベルとタンパクレベルで観察するため,In situ hybridization法および免疫組織染色法の条件を検討した。さらに,7週齢のVDRKOの脛骨を用いて発現部位を調べたところ,OPは肥大軟骨細胞,石灰化軟骨細胞,類骨層などで強く発現していた。今後は,1と対比させて成長に伴う変化を調べるとともに,レスキューの可能性について検討する予定である
|