今年度に行った研究によって得られた新たな知見等の成果は以下に示す通りである。 1. 骨芽細胞は分化に伴い骨形成のマーカーである骨型アルカリ性ホスファターゼ(ALP)の生成や石灰化を起こす。マウスより分離されたTBR312細胞についてALP、I型コラーゲン、オステオカルシン、ビタミンDレセプターおよびオステオポンチンなどの分化マーカーの発現は確認されていない。そこでTBR312細胞の骨芽細胞としての性質を確認する目的で、分化マーカーの生成をラジオイムノアッセイ方法で調べようとしたが、適切な抗体が入手できなかった。次にRTPCR法により発現量の解析を試みた結果、増殖時期に比較して分化時期には5種の分化マーカーのmRNAレベルがいずれの場合においても有為に増加していることが確認された。特にALPに関しては約3倍の発現量の増加が認められた。すなわちTBR312細胞は分化時に骨芽細胞としての分化マーカーを発現していることが判明した。 2. TBR312細胞の増殖をアラマブルーを用いて測定した結果、細菌由来のホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC(PIPLC)の共存下ではその増殖が阻害されることが判明した。また分化過程で認められる石灰化が起こる時期にPIPLC共存下および非共存下でのカルシウム量を測定すると、PIPLCを共存させた場合には有為なカルシウム量の減少が確認された。すなわちPIPLCにより可溶化されるグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカータンパク質が骨芽細胞の増殖および分化において重要な役割を果たしていることが判明した。 今後は増殖及び分化時に特異的に発現してPIPLC処理で遊離してくるGPIアンカータンパク質を分離精製し、そのアミノ酸組成や、ペプチド断片の配列を決定する予定であるが、このために化学発光を用いたGPIアンカータンパク質の特異的検出法を現在検討中である。
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