研究課題/領域番号 |
10672093
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
内田 庸子 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (30075494)
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研究分担者 |
小川 哲 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (60266715)
村木 篁 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (50051446)
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キーワード | 褐色脂肪細胞 / 腫瘍壊死因子 / 肥満遺伝子 / レプチン / プロテインキナーゼC / 遺伝子発現 |
研究概要 |
脂肪細胞は、分化に応じて脂肪細胞特異的な遺伝子を発現し機能を果たす。近年発見された肥満遺伝子(ob-gene)の遺伝子産物レプチンは、生体のエネルギーバランスを恒常に保つ機能分子であるが、脂肪細胞特異的な分化発現マーカーでもある。本研究では、アデイポサイトカインの1つであり従来分化抑制因子として考えられている腫瘍壊死因子(TNF-α)が、レプチンの産生分泌にどのように働くか又、その作用に関与する細胞内情報伝達系等を明らかにすべく、マウス褐色脂肪細胞初代培養系を用い実験を行ない、以下の結果を得た。 1) TNF-αは、濃度(0.5-50ng/ml)、時間(3-48h)依存性に、褐色脂肪細胞のレプチン分泌(medium中へ分泌したレプチンをRIAにて測定)を抑制した。 2) RT-PCRによりレプチンmRNAを測定すると、TNF-αによりob-gene遺伝子発現の抑制が認められた。 3) TNF-αの細胞内情報伝達系の中で、脂肪細胞分化に係わるというプロテインキナーゼC(PKC)の関与を明らかにすべくPKC阻害薬を用いて実験した。選択的PKC阻害薬bisindolylmaleimideI(BIM)およびl-(5-isoquinolinesulfonyl)-2-methylpiperazine dihydrochloride(H7)は、TNF-αのレプチン遺伝子発現および分泌低下作用を抑制した。 4) 褐色脂肪細胞の細胞質および膜分画を調整しPKC活性を測定すると、TNF-αによりPKC活性が細胞質分画で減少、膜分画で増加しトランスロケーションが認められた。 5) ホルボールエステル、phorbol 12-myristate acetate(PMA)および合成ジアシルグリセロールによりPKCを活性化すると、レプチンの遺伝子発現、分泌が抑制された。 以上の結果は、褐色脂肪細胞において、TNF-αは、PKCを介する機序によりレプチン産生を低下し、細胞の成熟化を抑制することが明らかとなった。更に関与するPKCのサブタイプおよび転写調節について研究中である。
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