研究概要 |
脂肪細胞は、分化に応じて脂肪細胞特異的な遺伝子を発現し機能を果たす。近年発見された肥満遺伝子(ob-gene)の遺伝子産物レプチンは、生体のエネルギーバランスを恒常に保つ機能分子であるが、脂肪細胞特異的な分化発現マーカーでもある。平成10年度、既にTNF-αは、褐色脂肪細胞においてob-gene遺伝子発現を抑制、レプチン分泌を低下し、細胞の成熟化を抑制することを明らかにした。本年度は培養褐色脂肪細胞の蛋白キナーゼC、(PKC)活性化によるレプチン分泌およびob-gene遺伝子発現に対する作用について調べ下記の結果を得た。 1.培養液中のレプチン量は、phorbol 12-myristate 13-acetate(PMA)(10-1000nM,24h)により濃度依存性に抑制された。 2.培養液中のレプチン量は、経時的に漸増するが、PMA(500nM)は、これを有意に抑制した。 3.PMAはob-gene遺伝子発現を濃度依存性に抑制した。 4.不活性なホルボールエステル4α-phorbol,13-didecanoate(4α-PDD)は、レプチン分泌およびob-gene遺伝子発現共に作用を示さなかった。 5.合成ジアシルグリセロールは、レプチン分泌およびob-gene遺伝子発現をいづれも抑制した。 6.PKC阻害薬bisindolylmaleimide(BIM)は、PMAによるレプチン分泌減少およびob-gene遺伝子発現低下をいづれも抑制した。 7.PMA(500nM,15min)によりPKC活性は、可溶性分画で減少、膜分画で増加し、トランスロケーションが確認された。 以上より、褐色脂肪細胞において、PKCの関与する細胞内情報伝達系が、肥満遺伝子発現抑制を介してレプチン分泌を低下する可能性が示唆された。
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