生殖細胞およびトランスホームした細胞に活性が高く、複製に際してその末端部分を合成するテロメラーゼに着目し、その阻害剤の分子設計を行った。酵素としては、逆転写活性を有することでウイルス由来のそれとの比較は重要であり、生物寿命との関連、がんとの関連で注目されているにもかかわらず、酵素学的解析はほとんど行われていない。 そこで、Stretch PCR法の条件を詳しく検討した結果、ヌクレオシドと関連する阻害剤候補物質のLineweaver-Burkプロットなどを用いた反応速度論的解析が可能となった。我々の研究室ですでに保有するL-dGTPおよびL-dTTPの阻害能をこの系で評価したところ、HIV逆転写酵素と比較してエナンチオ選択性が高いことが明らかとなった。我々が合成したdUTP類似体についてその5位に疎水性スチリル基を導入すると親和性が高まり、一方、HIV逆転写酵素を強く阻害することで有名なHEPT誘導体はテロメラーゼを全く阻害しないことも明らかとなった。以上の知見に基づいて、塩基部では、かさ高さ、疎水性、親水性、電気陰性度などを指標とした置換メチル基を有するアラUTP誘導体、糖部では、既に有効なアラビノース、ジデオキシリボースとの比較において従来全く試みられていないリキソースヌクレオシド誘導体を設計、合成した。今回ヒトHeLa細胞テロメラーゼを用いて検討したが、さらなる素材としてサクラマス精巣に高いテロメラーゼ活性を有することを見出したのでこれは今後の蛋白質化学的解析に発展することが期待される。
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