1.腎臓のmedium chain acyl-CoA synthetaseIIの精製 肝臓と腎臓における酵素の発現量が異なることを明らかにしたことより、サリチル酸に活性を示す酵素(medium chain-acyl-CoA synthetaseII)については牛腎のミトコンドリアから2種類を部分精製した。2種類の酵素は、以前に報告したmedium chain acyl-CoA synthetaseIと同様、中鎖脂肪酸、芳香族酸及びアリル酢酸にも活性を示したが、サリチル酸を含むオルト位置換体にも活性を示し、新たな酵素であることが分かった。しかし、α位に置換基を有するアリル酢酸にはほとんど活性を示さなかった。 2.毒性に関与する分子種の同定 (1)以前に報告したI型は脂肪酸に似た構造の安息香酸誘導体(3-phenoxy-、4-pentyl-、4-heptyl-benzoic acids)に高い活性を示し、その活性なエステル体がハイブリッドトリグリセライド前駆体になりうることを明らかにしたが、medium chain acyl-CoA synthetaseIIについてはI型に比べるとそれら化合物に対する活性は低いことが分かった。ケトプロフェンがハイブリッドトリグリセライドを形成し、脂肪組織に蓄積されるとの報告があるが、medium chain acyl-CoA synthetaseIとII共に、ケトプロフェンに対する活性は非常に低く、毒性発現には他のアイソザイムの関与が示唆された。 (2)X線造影剤による遅発性ショックの報告が年々増加の傾向にある。安息香酸誘導体からなるX線造影剤も多く、活性化された代謝物も毒性発現に関わることが考えられる。毒性機序解明の一環として、X線造影剤及び関連化合物の代謝について検討したが、I及びII型の基質になりにくいことが判明し、毒性発現における本酵素の関与はないことが明らかとなった。
|