1.medium chain acyl-CoA synthetaseに起因する毒性発現 (1)解熱鎮痛剤、キノロン系抗菌剤及びニューキノロン系抗菌剤によりmedium chain acyl-CoA synthetaseが競合的阻害を受けることは初年度に報告した。しかし、薬物相互作用として、中枢性痙攣がニューキノロン系抗菌剤と解熱鎮痛剤の併用投与により誘発され、エノキサシンとフェルビナクの併用が最も強い痙攣を起こすことが指摘されている。本酵素もその薬剤の併用により強く阻害を受けることがわかった。従って、本酵素の阻害はライ症候群の発症や痙攣を引き起こすメカニズムの1つである可能性が示唆された。 (2)グリシン抱合体形成において、どの段階が律速であるか確証はない。また、活性中間体であるAcyl-CoAsの性質がカルボン酸類の解毒あるいは毒性化の経路決定に大きな影響を及ぼすと考えられる。マイクロダイアリシス法を使って、グリシン抱合の経時的変化を追跡した結果、グリシン抱合の律速はグリシンの転移段階であることが明らかとなった。また、腎における安息香酸のグリシン抱合体形成には少なくとも2種類のmedium chain acyl-CoA synthetaseと1種類のN-acyltransferaseが関与していることが推察された。 トリグリセリドに取り込まれる3-phenoxybenzoyl-CoA体は安定であったのに対し、馬尿酸として解毒されるbenzoyl-CoA体は非常に不安定であった。これらの結果より、acyl-CoA体の安定性により体内に入った異物の解毒化と毒性化の二者択一経路が決定されることが示唆された。 2.腎のmedium chain acyl-CoA synthetaseの精製 (1)medium chain acyl-CoA synthetaseがグリシン抱合の律速酵素であることを明らかにした。 (2)サリチル酸に活性を示すmedium chain acyl-CoA synthetaseを新しく見いだしたが、サリチル酸に対する活性は低いことが分かった。N-末端は保護されており、アミノ酸配列は現在検討中である。
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