研究概要 |
今年度は、鼻粘膜への高分子化合物の送達における膜融合リポソーム(FL)の有用性の評価を、負に荷電した通常リポソーム(Lip)とFLを比較することにより行った。その結果、得られた新たな知見等の成果を以下に示す。 1. ラット鼻腔にLipとFLを投与、一定時間後に残存するリポソームを回収した。その結果、実験を行った1時間まで回収率は経時的に減少し、全ての時間でFLの方がLipに比べ有意に回収率が減少した。FLでは未回収の約50%が、Lipでは未回収のほとんどが粘液から回収された。このことより、鼻粘液がこれらリポソームの鼻粘膜への移行、融合に負の役割を果たしているものと考えられた。また、FLでは投与量の約30%が粘膜細胞内より検出された。 2. 鼻中隔の組織切片を作成し、内封した蛍光物質(分子量4,000)の鼻粘膜への移行について共焦点レーザー顕微鏡を用い検討した。その結果、1の結果を支持する画像が得られた。 3. リポソームに内封する物質の分子量の影響を検討した結果、用いた高分子化合物の分子量範囲(約4,000〜150,000)において、FLでは鼻粘膜への移行、融合に影響を受けなかった。 4. FLでは、リポソームの投与量の増加に伴い回収率に飽和が認められ、鼻粘膜への移行、融合に飽和過程の存在が示唆された。これは、FLが鼻粘膜表面のシアル酸を認識することに起因するものと推察された。 5. In vitro細胞培養系において、FLの融合タンパク質に作用し融合を阻害することが知られている街dithiothreitolを用い、1と同様の検討を行った。その結果、in vivoにおいても阻害効果が認められた。 このことは、FLがin vivoにおいてもin vitro細胞培養系と同様の細胞認識機構で細胞融合していることを示唆するものと考えられた。
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