研究概要 |
ニカルジピン、ベラパミル、シンナリジンといったカルシウムチャネル拮抗薬が、ラットの肝にCYP1A2、CYP3A1/3A2、CYP2E1を誘導することを見出していたが、カルシウムイオンチャネル拮抗物質すべてに、これら誘導作用があるか否かを検討するため、まず最初にカルシウムイオンチャネル拮抗作用を有することが知られているコバルトイオンやニッケルイオンをラットに投与し、肝における各種CYP分子種の変動を各々mRNAおよび酵素蛋白レベルで調べた。その結果、これら重金属イオンには、カルシウムイオンチャネル拮抗薬と同様に、CYP1A2を誘導する性質があるものの、他のCYP分子種の発現には抑制的に作用することが明らかになった。したがって、CYP1A2以外のCYP分子種の発現・誘導には、細胞内カルシウムイオン濃度以外の要因が重要である可能性が考えられる。一方、肝細胞のheterogeneityを考えると、CYP1A2やその他CYP分子種の誘導機構の解明には、種々CYP遺伝子を発現する継代可能な培養肝細胞が有力な武器になる。そこで、雄性SDラット肝より樹立した培養肝細胞株を用い、CYP1A1/1A2,CYP3A1/3A2およびCYP2E1遺伝子発現をRT-PCR法を用いて検討した。その結果、いずれのCYP遺伝子発現の場合にも、細胞内カルシウムイオン濃度が直接的にその発現を左右するのでなく、各遺伝子発現の転写を制御する細胞内因子、特に負に働く制御因子が各CYP遺伝子発現を支配していることが示唆された。
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