CYP2Bsubfamilyは肝臓で常在的に発現している主たるP450の一種で、動物では性特異的に発現することが観察されている。マウスでは雌>雄で、発現している分子種(Cyp2b9、Cyp2b10)の構成も雌雄で異なっている。これら分子種はフェノバルビタール(PB)によっても誘導され、その誘導調節機構の研究が急速に進展したが、常在的な発現の機構については不明の点が多いために本研究は計画された。 性腺や副腎摘出動物を用いてホルモン投与による発現への影響を見ると、Cyp2b9とCyp2b10発現に関わるものは各々雌性ホルモンと副腎皮質ホルモンで、副腎皮質ホルモンは同時にCyp2b9発現に抑制作用を示した。またこの分子種の発現抑制には雄性ホルモンが関与している可能性が示され、性特異的な発現に関わる因子の一つとして考えられた。またCyp2b10遺伝子の5'上流域についてルシフェラーゼアッセイ等で検討したところ、エストラジオール応答領域は-2331から-2281bpに限定され、さらに塩基変異を導入することによって、NR1(nuclear receptor1)部位と同定され、PB応答領域と同じことが分かった。また農薬のDDTによる誘導も同じ領域が関わることが明らかとなり、この遺伝子は多様な誘導剤に対して、限定された領域が発現に関わっていることが可能性が示された。Cyp2b9は雌で発現している主分子種にも関わらず、その発現調節機構の研究はほとんど行われていない。この分子種の発現に雌性ホルモンが関わっていることを発見したことは、今後の研究に有力な手がかりとなる。
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