研究概要 |
本研究の目的は、枯草菌ゲノム解折により見つかった新たな細胞増殖必須遺伝子、yycF-G(2成分制御系に属する遺伝子)とywlC(SUA5ファミリーに属する遺伝子)の機能解析である。両遺伝子は、その新規性から、新しい作用機序を持つ抗生物質を探索、創出するための良い標的遺伝子に成り得ると期待できる。 (1) yycF-G遺伝子の機能解析。 この遺伝子の機能解析は偶然米国でも同時に行われていた。その細胞増殖に必須な性質については昨年末に発表されてしまった(J.Bacteriol.,180,p.6375-6383,1998)が、その論文の中でも新規抗菌剤開発におけるこの遺伝子の重要性が議論されている。そこで、我々はさらに機能解析を進めて、この遺伝子による制御系の生物学的意味を探るために、この制御系の支配下にある遺伝子群の同定を行っている。最近、細胞分裂に必須な遺伝子ftsZの転写(三つあるプロモーターのうちの一つ)がYycFレギュレーターにより制御されていることを見出した。現在、その制御配列の同定を行っている。この配列が同定されれば、既にゲノムの全構造が決定されている枯草菌データベースを検索することにより、YycFレギュレーターの支配下にある遺伝子群を明らかにすることができる。ftszプロモーターに存在するYycF制御配列が分かり次第、論文を投稿する予定にしている。 (2) ywlC遺伝子の機能解析。 この遺伝子発現がIPTGにより制御される菌株を作成し、YwlC蛋白欠損下での細胞形態や染色体の様子を蛍光顕微鏡下で観察した。その結果、成長速度の・低下により細胞はかなり小さくなっていたが、染色体の細胞内分布はほぼ正常であった。この結果から、この遺伝子産物は蛋白合成過程に関与していると推測できた。また興味あることに、この遺伝子の転写は染色体複製開始に必須な蛋白DnaAにより負に制御されることも分かった。
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