研究概要 |
本年度は主にSarcophyton属ソフトコーラルについてそのセンブラン型ジテルペンと一部の海綿の生物活性成分の変動について調査した。 Sarcophyton類については合計171標本を沖縄県内の7ヶ所で採集し、その含有ジテルペンをgradient HPLCと1H NMRで同定した。種の同定は、Tel Aviv大学のBenayahu教授と共同で骨片などの形態的特徴を基に行った。その結果、S.trocheliophorumは2つのchemotypeに分かれ、sarcophytol A typeの他にsarcophytoxide typeが主に見られた。最も標本数の多いS.glaucumおよびS.cinereumでは多くのchemotypeが存在し、emblides typeが半分ほど(55%)見られたが、sarcophytoxide type(23%)、その他の様々な成分のtypeとかなり変化に富んでいることが判明した。この2種の形態上の違いはあまり大きくなく、遺伝子的な解析を待たねばならないが、将来同一の種類へ、あるいはより細分化される可能性もあるのではないかと考えられた。さらにS.ehrenbergi,S.crassocauleについても検討し、前者には明瞭なパターンが見られないこと、反対に後者は全ての個体がsarcophytol A typeであることを見出した。これらの内容については2000年10月に第9回国際サンゴ礁学会で報告した。さらに与那国と奄美で採集したS.glaucumの一部の標本からは、2つの新規ジテルペンを取りだし、スペクトルデータの解析およびX線回折から構造決定した。これについては現在投稿準備をすすめている。 一方、海綿Stylotella aurantiumからは一連のcarbonimidic dichlorideを含むセスキテルペン類を見出し、雑誌に報告した。
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