本研究は、重力負荷が骨形成に関与する薬物の作用を増強させるか否か検討し、さらに、その作用機序を調べ、未だ著効のある薬物が見出されていない骨粗鬆症の治療への機械的刺激負荷の応用を骨芽細胞様細胞ROS17/2.8細胞を用いて考えるものである。 平成10年度には、活性化ビタミンD3によるオステオカルシンの合成促進作用、植物由来の卵胞ホルモンの類縁体のKCA-098による骨芽細胞のアルカリホスファターゼ活性促進作用、副甲状腺ホルモン(PTH)によるcAMP上昇作用を重力負荷は相加的に増強することを示した。(日本薬学会第120年会発表予定)。すなわち、薬物処理に際し、機械的刺激を同時に加えることにより、その作用が増強されることを示しており、治療法への応用が期待される。 平成11年度には、この共同作用の作用機構を知る目的で、重力負荷による細胞内情報伝達機構の変動について検討した。特に、研究代表者らは、重力負荷は細胞質骨格系に影響を与えるのとを示してきたので、この下流に存在すると考えられるMitogen Activated Protein Kinase(MAPキナーゼ)の関与について検討した。その結果、MAPキナーゼのインヒビターを使った結果から、MAPキナーゼはアルカリホスファターゼ活性を抑制する作用をもつこと、重力負荷はMAPキナーゼ活性を抑制すること、その結果アルカリホスファターゼ活性の抑制が解除され、その活性を上昇させることを示唆した。すなわち、重力負荷はMAPキナーゼ活性を抑制することにより骨芽細胞の分化機能を促進することを示唆した。今後は薬物がこの機構にどのように関与しているか検討し、共同作用の実態を明らかにしていく。さらに11年度にはマウス骨髄細胞の培養実験から、重力負荷は破骨細胞の形成には影響を与えないことを示した。
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