研究概要 |
抗精神病薬ハロペリドール(HP)の長期投与時にみられる遅延性ジスキネージアやパーキンソニズムなどの神経毒性発現と関連するカチオン性代謝物生成(HPP^+)に関与する脳組織内酵素系について、今年度は次に示す項目を検討した:1)cofactor NADPH,NADH依存性、2)モノアミン酸化酵素(MAO)の関与、3)ペルオキシダーゼ系の関与。 酵素液として脳ホモジネートを、基質としてHPおよびその脱水化合物であるHPTPを用いて、代謝物HPP^+生成におけるcofactor NADPH、NADH依存性について検討した。その結果、代謝物HPP^+生成反応はcofactor NADPH、NADH非依存性の反応であり、P450の関与が低いことを明らかにした。またHPを基質とした代謝物HPP^+生成活性は、HPTPを基質とした場合に比べ非常に低く、約1/30であり、脱水化合物HPTPのほうが代謝物HPP^+を生成しやすいことを明らかにした。次にMAO阻害剤デプレニル、クロルジリンなどを用い代謝物HPP^+生成反応の阻害効果について検討した。その結果、MAO-A阻害剤クロルジリンにより、約2割ほどの阻害効果がみられ、代謝物HPP^+生成にはMAOの関与が低いことを明らかにした。以上の結果より、脳組織における代謝物HPP^+生成に対するモノオキシゲナーゼ系酵素の関与が低いことから、ペルオキシゲナーゼ系酵素の関与について検討した。クメンヒドロペルオキシド(CuOOH)と脳ホモジネートの反応系により、代謝物HPP^+生成活性は数倍高まること、またCuOOHとHorseradish Peroxidaseの反応系により代謝物HPP^+の生成を確認した。さらにEDTAやデフェロキサミンの添加により代謝物HPP^+生成活性が有意に抑制されることから、金属イオンの関与が示唆された。以上の研究成果より、カチオン性代謝物HPP^+の生成には、脳組織内ペルオキダーゼ系の酵素が主として関与していることが明らかになった。
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