抗精神病薬ハロペリドール(HP)の長期投与時にみられる遅延性ジスキネージアやパーキンソニズムなどの神経毒性発現と関連するカチオン性代謝物生成(HPP^+)に関与する脳組織内酵素系について、今年度は次に示す項目を検討した:1)代謝物HPP^+生成反応におけるペルオキシダーゼ系の関与、2)プロスタグランジンH合成系の関与。まずペルオキシダーゼ系の関与を検討するために、酵素標品としてHorseradish Peroxidase、Myeroperoxidaseを、過酸化物としてクメンヒドロペルオキシド(CuOOH)を用い、代謝物HPP^+の生成活性について調べた。その結果、これら酵素標品が代謝物HPP^+の生成反応を触媒していることを観察すると同時に、ペルオキシダーゼ阻害剤として知られるヒドロキシルアミンやアミノ安息香酸によりこの代謝物HPP^+生成反応が顕著に抑制された。この結果より、基質HPのカチオン性代謝物生成(HPP^+)に関与する脳内酵素系として、ペルオキシダーゼ系酵素の関与が示唆された。次にアラキドン酸からプロスタグランジンG2およびH2を合成する際に、異物を同時に酸化する系として知られているプロスタグランジンH合成系の関与について検討した。酵素液として脳ホモジネートP2遠心画分を用い、基質HPをアラキドン酸含有反応系で、インキュベートした結果、代謝物HPP^+の生成活性は、アラキドン酸非添加系と比較して有意な増加は観察されなかった。以上の結果より、結論として、脳組織内におけるハロペリドールのカチオン性代謝物(HPP^+)生成に関与する酵素系は主として過酸化物の消去と関連するペルオキシダーゼ系の酵素が考えられた。
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