昨年度の多摩川水系からのサルモネラ菌(S.enteritidis以下SE)検出に続き、今年度は環境中におけるSEについて、養鶏場およびその周辺の環境に焦点を当て、壁、土壌、糞便板からの検出を行い、液卵から検出されたSEとの比較を行った。 (1)サルモネラ菌の病原性の評価:Balb/cマウスを一群5匹で用意し、対数増殖期に至るまで培養したSE7株を投与量を2点とって経口感染させ、経日的にマウスの死亡を観察した。その結果、液卵からのSE(2株/5株)も環境中のSE(1株/2株)もマウスに致死毒性を示し、その強さは臨床分離株と大差が無かった。これより、養鶏場の周辺環境にも病原性のSEが存在し、液卵からも検出されたことから、サルモネラの環境汚染が進んでいることが示唆された。 (2)環境分離株の病原性の発現機構に関する研究:上記の環境分離株の研究において、分離株の蛋白のパターンを分析した結果、分子量20-30kDa付近の蛋白に差があることが見い出された。マウスに対する病原性を示した株はこれらの蛋白の染色パターンが類似性を示した。そこで、この中のタンパク質の一つを精製し、アミノ酸配列を解析している。なお、これらの環境分離株はいずれもinvA(+)であり、TypeIIIの分泌に関わるinvA以外にもマウスの致死性を決定する遺伝子とその産物(病原因子)があることを示唆しており、環境中でのSEの病原性の保持との関係について解析を進めている。
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