研究概要 |
細胞毒性以外のベロ毒素/志賀毒素(Stx)の生物活性として、高濃度を用いた場合に単球/マクロファージに対してサイトカイン産生誘導活性があることが知られている。我々は腸管上皮細胞様に分化したヒト由来の培養細胞に対しては非常に低濃度のStxに同活性があることを明らかにした。Stxは受容体への結合活性を有するBサブユニットとRNA N-グリコシダーゼ活性を有するAサブユニットから成るが、Stxと同様の酵素活性を有するが、Bサブユニットの結合する受容体分子が異なる植物毒素・リシンにも同じ細胞に対してサイトカイン産生誘導活性があることがわかった。両者の誘導するサイトカインの種類を比較するために種々のサイトカインmRNAの発現を調べたところ、どちらの毒素も同じ活性を示し、IL-8,MCP-1,MIP-1α,TNFα,MIP-1βの各mRNAを誘導するが、IL-1β mRNAは誘導しなかった。ベロ毒素の細胞毒性は同毒素の受容体である糖脂質・Gb3を含むリポソームで阻害することを我々は既に見出している。そこでサイトカイン誘導活性に対する影響を調べたところ、このリポソームでIL-8産生が抑制されることがわかった。また同様に、リシンの細胞毒性を中和することが知られているラクトースはリシンのサイトカイン誘導活性を中和した。これらの結果から、両毒素とも細胞毒性を示すのと同じ経路で細胞内に取り込まれ、両毒素の有するRNA N-グリコシダーゼ活性によってサイトカイン産生誘導をすることがわかった。
|