研究概要 |
1. シミュレーションモデルの開発 網膜症未発症,非増殖性網膜症,増殖性網膜症もしくは黄斑浮腫,高度視力障害,死亡の5つの健康状態を持つMarkov modelを基本構造とした糖尿病網膜症モデルを開発した.モデルに使用した年齢ごとの死亡率は厚生省第18回生命表(1995)を用い,各健康状態の移行確率や治療効果については,MEDLINEと医学中央雑誌を検索し内外の臨床研究を収集しそれらを基に推定した. 2. 効用の測定 糖尿病入院患者を対象に失明状態の効用を,評点尺度法と基準的賭け法により測定した. 3. 効用を用いた決断分析(スクリーニング効果の予備的な検討) 1で開発したモデルを利用して2年毎の網膜症スクリーニング実施,1年毎のスクリーニング,半年毎のスクリーニング,スクリーニング非実施の4つの選択肢を持つ判断樹を作成し,糖尿病患者のQOL(quality of life)低下の防止効果について試算を行った.その結果40歳発症の男性NIDDM(noninsulin dependent diabetes mellitus)では,QALY(quality adjusted life year)は2年毎のスクリーニングが27.62年,1年毎が27.69年,半年毎が27.73年と,スクリーニング非実施の26.75年に比較してそれぞれ0,88年,0.95年,0.98年延長すると計算された.さらに費用も考慮した予備的な経済的評価も実施した. 4. 成果の発表 以上の成果の一部は,第41回日本糖尿病学会,第18回医療情報学連合大会,第20回医学判断学学会(米国),第5回日本糖尿病眼学会で発表した.
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