停電、電話回線の途絶といった条件下の災害地にある医療機関から、被害情報を発信するための手段として、可搬型衛星通信装置とパーソナルコンピュータを用いた通信がどの程度有用であるかを検討した。 方法:可搬型衛星通信装置(MTT DoCoMo)とパーソナルコンピュータを用いて、データ通信を行った。愛媛大学医学部のネットワークが災害により停止するという想定で、nifty-serve 2800bpsの接続ポイントに接続した。なお電源については、ポータブル電源およびDC-ACコンバータを用いて、停電下の情報通信を再現した。 結果:送信したデータ内容は以下の通りである。1)愛媛大学医学部附属病院の入院患者約600人の模擬安否情報を、慶応大学 村井らによるWIDEプロジェクト、IAA(I Am Alive)計画に送信した。送信方法はコンマ区切りテキスト文(CSV)とし、患者1人当たりのデータ項目は、氏名、年齢、性別、所在(入院病棟、外泊先)、安否(被災状況、重症度)等とした。送信データはWIDEプロジェクトのデータベースに記録され、インターネット、電話、FAX等を通じて、全国から検索が可能となった。2)愛媛大学医学部付属病院入院患者の模擬安否情報と当施設の仮想的な被災状況を、報告フォームに沿って、数時間ごとにデータ通信によりPittsburgh大学の研究協力者へ送り、Pittsburgh大学のウェブ情報として、仮想被災状況を発信した。 結論:可搬型衛星通信装置とパソコンによって災害時データ通信が可能である。
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