近年の消化器内視鏡治療の発達がもたらした効果として、消化管出血の内視鏡的止血法による治療期間の短縮と医療費の削減、さらに治療対象例の増加と、高齢や併存疾患により外科治療非適応例に対する適応拡大が顕著であることを報告した。更に、食道と胃の早期癌に対する内視鏡的粘膜切除術 (endoscopic mucosal resection ; EMR) が低侵襲で患者の心身両面の負担を減少させ、治療期間(平均在院日数)短縮による医療費削減効果を明らかにした。 今後の少子高齢化と生産年令人口の減少を鑑み、医療保険制度の改革が必須な社会状況であり、米国の医療保険制度における診断別疾患群包括払い方式 DRG(Diagnosis Related Group ) /PPS (Prospective Payment System) を参考にした検討が進行しているが、基本となる専門診療の基準 (ガイドライン) の検討が充分ではない。具体的に消化器内視鏡の専門領域において、医療効率を客観的に評価しうる評価基準を作成することを提言した。医療の客観的評価に関する研究の必要性が重要視され critical path 〔パス法〕 やEvidence-Based Medicine (EBM) など、臨床医学を対象とした医療評価基準に関する社会医学的研究が注目されているが、臨床医学を対象として、医療効果の指標である入院期間 (平均在院日数) や医療軽費 (診療報酬点数) に関する社会医学的研究は数少ない。臨床医学の社会性や経済性に関して、保健・医療・福祉の包括医療の枠組みにおいて重大な政策課題であり、臨床的な社会医学的研究の推進が必要であることを指摘した。
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