ゲノム刷り込みを受ける哺乳類の遺伝子はクラスターを形成しており、刷込みドメインと呼ばれる機能単位が存在する。しがし個々のドメインが如何にして規定されているのか、ドメイン間の干渉が如何にして遮断されているのか不明である。そこでマウス第7染色体遠位部にある刷込みドメインのセントロメア側の境界(H19-L23mrp遺伝子間領域)を対象として、ドメイン境界を遮断する機構を調ベ、以下の成果を得た。1.まずヒトーマウス間の塩基配列比較により境界領域内に合計10箇所の保存された配列があることが判明したので、個々の配列を検定用ベクターに接続してトランスジェニックマウスを作成した。その結果、10箇所のうち7箇所はそれぞれ特有の組織で働く組織特異的エンハンサーであることが分かった。2.L23mrpがこれらのエンハンサーを利用できないのは境界配列(インスレーター)があるためかプロモーター・エンハンサー不適合によるのかを区別するためトランスジェニックマウスを用いて調べたが、予想に反してL23mrp自身のプロモーター効果が非常に強かったため、エンハンサーの効果の有無の判定が困難であった。3.またエンハンサー活性を示さない3箇所の保存配列のインスレーター効果を上記検定ベクターで調べる予定であったが、トランスジェニックマウスでは複数コピーが直列するため判定は困難と判断し中止した。4.結局この領域には翻訳されない転写物や組織特異的エンハンサ一のクラスターがあることが分かり、これらのユニークな特徴からグロビンLCRと同様な境界決定を行っている可能性が強く示唆された。
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