メチル化の主たるターゲットの一つである寄生性DNA因子のメチル化パターンと比較することによって、刷り込み遺伝子メチル化の特異性に対応する分子機構を探る目的でそれらの単離作業を進めた。寄生性DNA因子としてヒト内在性レトロウィルス(HERV)K-familyを選び、活性型と不活性型およびインプリンティングドメイン内に局在するものとそれ以外ものに分けて解析することにした。 胎盤、胎児肺および末血リンパ球の発現解析結果から、極めて低いながら5つのHERV-K遺伝子が発現していることがわかった(うち1つは前年度までに単離済み)。それぞれに特異的なオリゴプローブを用いて、これらに対応するBACクローンを単離し、3つのHERV-K遺伝子の局在を決定し得た。 一方、GAGおよびENVプローブによるスクリーニングでHERV全構造を持つ33個のコスミドクローンが得られたが、制限酵素およびシーケンシング解析の結果、これらはわずか2種類の同一ないしはオーバラップするクローンに分類されることがわかった。このうち、一つは22q11.2に局在を決定できたが、もう一つはセントロメリックリピートの中に存在して局在を決定することができなかった。 コンピューターによる検索では、ゲノムデータベースに登録されている11p15.5コンティグ1.5Mbおよび15q11-q13領域の488kbの配列の中には完全構造のHERV-Kはもちろん、65%以上のホモロジーを持つsolo LTRも見い出されなかった。
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