野生型AAVは、非病原性であり、更にヒトの第19染色体の特定の部位(AAVS1領域)に組込まれる等の特徴を持ち、遺伝子治療のためにベクターとして開発が期待されていうる。しかし、その部位特異的組込みは、ウイルスのコードするRepタンパク質(Rep78/68)を介したウイルスゲノムの両末端の繰り返し構造(ITR)と第19染色体のAAVS1領域との非相同組換えにより起こると考えられている。この為、現行の組換えAAVベクターではRep遺伝子を取り除いているため、野生型AAVの持つ部位特異的挿入能を持ち得ず、ランダムな遺伝子挿入を行う。細胞毒性のあるRep蛋白質を部位特異的挿入に必要な時期(遺伝子導入時)にのみ、複製起点を持たない環状発現ユニットから発現させ、部位特異的挿入が行われた結果に基づき、Rep蛋白とAAVベクター遺伝子とを細胞へ直接に供給することにより部位特異的挿入を行う方法を確立を試みた。cationic liposomeやセンダイウイルスの膜融合能を利用したvirosome(膜融合リポゾーム)により、Rep蛋白と目的遺伝子複合体(AAVベクター遺伝子と、大腸菌で発現させたRep蛋白とを抱合)をヒト培養細胞へ供給し、その導入効率を改良を行った部位特異的挿入検出法を用いて検討した。この方法はAAVベクター遺伝子をAAVCap蛋白質でパッケイジングするという従来の組換えウイルスの作成法という方法論を捨てているため、AAVベクターの問題点の1つである導入遺伝子のサイズによる制眼を克服しているばかりか、標的細胞の健全性を損なわずにsilentなヒト第19染色体長腕(q13.4-19ter)領域へ目的遺伝子を選択的に導入する事が可能であり、非常に安全性の高い遺伝子導入法と成りうる。
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