本年度も前年度に引き続き、インドネシア、ミャンマー、タイ、日本人検体について遺伝子解析を行った。 1.インドネシアのハルマヘラ島・ブル島でのスクリーニングにより、G6PD活性低下が認められた9例について遺伝子解析を行い、8例で383T→C;G6PD Vanua Lavaを、1例で592C→T;G6PD Coimbraを同定した。 2.ミャンマー(モン州・シャン州)でのスクリーニングにより見出されたG6PD異常症例11例の解析では、10例で487G→A;G6PD Mahidol、1例で1360C→T;G6PD Unionを同定した。 3.タイ在住のミャシマー人のスクリーニングで見出されたG6PD異常症5例の解析では、全例で487G→A;G6PD Mahidolを同定し、タイ在住のモン族の1例でもG6PD Mahidolを見出した。更に、G6PD活性低下を認めた現地スタッフのタイ人女性は、1360C→T;G6PD Unionと1376G→T;G6PD Cantonの複合ヘテロ接合体であることが判明した。 4.日本人症例では、2例で1388G→A;G6PD Kaiping(母親は香港、台湾出身)、各1例に1160G→A;G6PD Beverly Hi11s、202G→A;G6PD Asahiを同定した。202G→Aは376A→Gと複合してアフリカ人に高頻度で見られるG6PD A-を産生することが知られているが、202G→A単独による変異酵素はこれまでに知られていない。 タイと同じくミャンマーでもG6PD Mahidolの頻度が高いこと、インドネシアでもメラネシア系の色彩が強いハルマヘラ島では、メラネシアに特徴的なG6PD Vanua Lavaが高頻度に認められることは新知見として重要である。
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