研究概要 |
薬物の血液脳関門透過性をブレインマイクロダイアリシス法で評価する方法を確立するために,下記の実験を行った。Wistarラット線条体にカニューレを植え込み,3日以上経過してから膜長3mmのプローブを挿入しRinger′s液を潅流した。潅流開始5時間後にパラコートをラット背部皮下に投与した。比較として,パラコートに化学構造の極めて類似したMPP^+を同様に投与した。投与後、1時間毎に潅流液をサンプリングし,3時間後に心臓より血液を採取した。更に,パラコート投与1時間後にMPP+を投与し,パラコートの血液脳関門に与える影響を観察した。能動輸送系の関与について,アミノ酸輸送系基質であるバリンを腹腔内に投与することによって血液脳関門透過性への影響を観察した。パラコートは,投与量依存的に投与後速やかに潅流液中に検出された。一方,MPP^+は,その血液中濃度はパラコートより高いにもかかわらず,潅流液中には全く検出することが出来なかった。この結果は,マイクロダイアリシスによる血液脳関門透過性実験は妥当で良い方法であることを示す。パラコート投与後にMPP^+を投与しても,MPP^+は潅流液中に検出することが出来なかった。このことは,パラコートの透過性は,パラコートがラジカル等によって血液脳関門を破壊することによるものではないと考えられる。バリンによって,パラコートの血液脳関門透過性は著名に低下した。従って,パラコートは,アミノ酸輸送系によって血液脳関門を透過するものと考えられた。 現在、最近重篤な脳障害を起こすことで問題となっているβ-ラクタム系抗生物質の血液脳関門透過性に対して,能動輸送系の解明・加齢及び腎機能の及ぼす影響について,研究を進めている。
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